睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時に呼吸が10秒以上止まることを「無呼吸」といいます。
一晩7時間の睡眠で30回以上、あるいは1時間あたり5回以上「無呼吸」が生じる場合、「睡眠時無呼吸症候群」と診断されます。
以下の症状に当てはまる方は睡眠時無呼吸症候群の可能性が高くなります。

• 周囲の方からいびきを指摘される
• 夜間の睡眠中によく目が覚める
• 起床時の頭痛や体のだるさ
• 日中の眠気

睡眠時無呼吸症候群を
治す方法について

医師および歯科医師の診断のもと、治療法は症状や重症度に応じて異なりますが、以下の方法が一般的です。

① 生活習慣の改善

② CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)

CPAPと呼ばれるマスクを使用して睡眠中に気道に空気を送り、閉塞を防ぎます。
中程度から重度の無呼吸症候群に非常に効果的で、医師の指導のもと行われます。

③ 口腔内装置(マウスピース)

顎を前方に引き出すことで、気道が狭くなるのを防ぐ装置です。軽度から中等度の無呼吸症候群に用いられることが多く、歯科医師の指導のもと行われます。

睡眠時無呼吸症候群の
検査・診断

睡眠時無呼吸症候群を調べるためには、医師による専門的な診断が必要です。
以下のような方法で検査や診断が行われます。

① 問診と身体検査

• 最初に医師が問診を行い、睡眠の質、日中の眠気、いびきの有無、肥満度(BMI)などを確認します。
• 家族にいびきや呼吸停止の観察がある場合、その情報も役立ちます。

② 簡易睡眠検査(在宅検査)

• ポリソムノグラフィ（PSG）という睡眠時無呼吸の検査を家庭で行う簡易版があります。
• 自宅で専用の検査機器を使用して、呼吸の回数、酸素飽和度、心拍数、体の動きなどを計測します。
• 軽度の症状が疑われる場合に有効で、簡便でありながら有用な情報が得られます。

③ 終夜ポリグラフ検査(入院検査)

• より精密な診断が必要な場合は、病院にて終夜ポリグラフ検査（PSG検査）を行います。夜間入院し、睡眠中の脳波、眼球の動き、筋電図、心電図、呼吸の流れなどを詳細にモニタリングします。
• 無呼吸の頻度や重症度を把握し、治療方針を決めるために重要な検査です。

④ エプワース眠気尺度(ESS)

• 自己評価テストで、日中の眠気の程度を自己申告でスコア化し、眠気が日常生活にどの程度影響を与えているかを測定します。SASの兆候を早期に把握するための指標となります。

無呼吸症候群を放置すると
起こるリスク

睡眠時無呼吸症候群(SAS)を放置すると、以下のような健康に深刻な影響を及ぼすことがあります。

• 日中の眠気と集中力の低下
  睡眠中に何度も呼吸が停止することで、深い睡眠が得られず、慢性的な睡眠不足に陥ります。これにより、日中の強い眠気や集中力の低下が起こり、学業や仕事のパフォーマンスに悪影響を与える可能性があります。
• 高血圧や心臓病
  SASにより酸素不足が繰り返されると、血圧が上がりやすくなります。慢性の高血圧を引き起こすリスクが高まります。長期的に放置すると、心不全や不整脈、狭心症、心筋梗塞などの心臓疾患のリスクも増加します。
• 脳卒中や動脈硬化
  SASにより血中酸素レベルが低下すると、脳血管や血管に負担がかかり、動脈硬化や脳卒中のリスクが増加します。
• 糖尿病
  SASはインスリン抵抗性に影響を与え、糖尿病の発症リスクが高まることが分かっています。
  特に肥満と合併すると、血糖値のコントロールが難しくなる場合があります。
• 事故のリスク増加
  日中の眠気が強くなるため、自動車運転や機械操作中に眠り込んでしまうリスクが増加します。
  SAS患者は交通事故や作業事故のリスクが高まるため、命に関わる危険性もあります。
  このように、放置すると重大な健康リスクに発展することがあるため、早期の診断と治療が重要です。

無呼吸症候群の初期症状とは

睡眠時無呼吸症候群（SAS）の初期症状には、以下に一例を示します。
これらの症状が見られたら、早めに医師に相談することをおすすめします。

• いびき
  SASの初期症状として、特に大きないびきが特徴的です。
  家族や同居者から「いびきが大きい」「途中で止まっている」と指摘されることが多いです。
• 呼吸の途絶
  睡眠中に呼吸が止まる（無呼吸）現象が起き、再び息をする時に「ハッ」と息を吸うような音を立てることがあります。無呼吸が頻繁にある場合、SASの可能性が高いです。
• 日中の強い眠気
  睡眠中に何度も呼吸が止まることで深い睡眠が得られず、日中に強い眠気を感じるようになります。
• 集中力や記憶力の低下
  睡眠不足による影響で、注意力が散漫になったり、集中力や記憶力が低下することがあります。
• 頭痛（特に朝の頭痛)
  SASの人は、酸素不足や睡眠不足のため、朝に頭痛が起こることがよくあります。
  起床時に頭が重い、ズキズキするという症状が見られる場合は要注意です。

SASの症状には、個人差があります。
いびきや日中の眠気といった典型的な症状が出る人もいれば、比較的軽微な症状だけで気づきにくい場合もあります。また、体質や年齢、生活習慣により症状の現れ方や重症度は異なります。
そのため、必ずしも全ての症状が当てはまるわけではなく、SASと診断されるまで自覚症状が少ないこともあります。家族や同居者からの指摘や、自分自身の健康チェックを定期的に行うことが早期発見につながります。

長期的な健康リスクに発展する可能性がありますので、気になる場合は早めに医師に相談して検査を受けることをおすすめします。

治療の流れ

• 医師による診察
• 簡易検査
• 結果説明
• 治療開始
• 定期検診

睡眠時無呼吸症候群（SAS）
やいびきの治療法

睡眠時無呼吸症候群（SAS）やいびきの治療法として、歯科医院で行える治療法には以下のようなものがあります。

① 口腔内装置（マウスピース）

スプリントや口腔内装置と呼ばれるマウスピースを装着する方法です。睡眠中に下顎を前方に固定することで、舌や喉の筋肉が気道を塞がないようにします。
主に軽度から中等度の睡眠時無呼吸症候群に適しており、いびきの改善にも効果があるとされています。歯科医師による定期的な調整も必要となります。

② 口腔周囲の筋肉のトレーニング(MFT：口腔筋機能療法)

当院では口周りや舌の筋肉のトレーニングを行う「口腔筋機能療法」を取り入れています。舌や喉の筋力を高めることで、睡眠中に気道が塞がりにくくなる効果が期待できます。
特に軽度の無呼吸やいびきに対して、補助的な治療として行われます。

③ 他の専門医との連携

SASが疑われる場合や重度のいびきがある場合、歯科医院から睡眠専門医や耳鼻咽喉科への紹介を受けることもあります。
特に重症のSASに対しては、持続陽圧呼吸療法（CPAP）などの治療が必要になるため、適切な専門医と連携して治療が行われます。

これらの治療法は、個々の症状や状態に応じて選ばれるため、歯科医院での診察の際に詳しく相談することが大切です。