今年も早いもので、もう一年の締めくくりの時期となりました。
日本の年末といえば、ベートーヴェンの交響曲第9番。
シンフォニーなのに「合唱付き」という珍しく、そして非常に面白い交響曲ですね。
第四楽章で、まず第一・第二・第三楽章を全て否定するところからはじまり、
そして、「これだ!」言わんばかりに歓喜の主題を演奏するのですが…
バリトン独唱が「このような音ではないんだ!」と、これまた否定しちゃうんですね。
ここで初めて声楽が導入され、歓喜の主題に続いて合唱「歓喜の歌」へと繋がっていくという、興味深い作品です。
いわゆる第九と呼ばれるベートーヴェンの9番目にして最後の交響曲ですが、
初演は大成功を収めたものの、当時の専門家からの批評は厳しく、
その後の演奏はことごとく失敗に終わっていました。
大規模な編成や1時間を超える長大な演奏時間、第4楽章の異質さから「オーケストラ泣かせ」とも言われ「演奏不可能」「駄作」との評価が定着したりなんかして、演奏機会に恵まれなくなってしまいます。
後に、ベルリオーズが感銘を受け作曲家となり、ワーグナーによって復活演奏され、それ以降「第九」は「傑作」という評価を得るようになり、現在に至るのです。
ちなみに、日本で年末に第九が演奏されるようになった発端は、
戦後まもない1940年代後半、オーケストラの収入が少なく、楽団員が年末年始の生活に困る状況を改善するために、
当時クラシックの演奏の中では「必ず(客が)入る曲目」であった「第九」を日本交響楽団(現在のN響)が年末に演奏するようになり、それが定例となっていったそうです。
余談ですが、私が大好きな指揮者フルトヴェングラーの指揮した「第九」は、
今でも「第九のベスト演奏」に挙げられることが多いとか。
年末を迎え、何かとお忙しいことと存じますが、皆様が健やかなる新年をお迎えになられますよう、心よりお祈り申し上げます。
山内